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「われわれが生きてきた昭和という時代」 【歴史奉行通信】第十一号

こんばんは。
伊東潤メールマガジン「第十一回 歴史奉行通信」をお届けいたします。

〓〓今週のTopic〓〓

1.読書会御礼およびエッセイ『横浜1963』
2.伊東潤Q&Aコーナー
3.お知らせ奉行通信<新刊情報 / 読書会 / TV出演情報>

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1.読書会御礼および
エッセイ『横浜1963』
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2/3の読書会は沢山の方にご参加いただきまして誠に有難うございました。

今回の読書会は、約二十名の皆様に参加いただき、
六月に発売予定の『アンフィニッシュト・ビジネス(仮)』
(『アンフィニッシュト』を改題)について議論いただきました。

『アンフィニッシュト・ビジネス(仮)』は、
一人の公安警察官が、ある学生運動組織への潜入を命じられることで始まる人間ドラマです。

それだけではなく、現代社会で起こった放火事件を追跡する警察官を登場させることにより、
読者は過去と現代を行き来することになります。
両事件がラストでつながり、布石や伏線が一気に回収されていくという構成です。

まだ発売されていない作品について語り合うのは
初めての試みでしたが、たいへん有意義な会となりました。

また今回は、プロデューサー視点を取り入れ、
作品を売っていくためのアイディアにまで議論の幅を広げたものにしました。

おかげさまで、最終仕上げ作業にあたっての収穫も大きかったと思います。
今回は、テーマを決めて以下の五つのグループに分かれて行いました。

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・カバー班 / 売れるカバーデザインについて話し合う班
・キャッチコピー班 / 売れる帯のコピーを話し合う班
・キャラクター班 / 登場キャラクターを、
どうすればもっと魅力的に描けるか話し合う班
・プロモーション班 / 販促の仕方を話し合う班
・ミステリー班 / ミステリー度をもっと強くするには
どうすればよいかを話し合う班

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議論の内容については、非開示とさせていただきますので悪しからず。
六月の発売時に是非お確かめください。

尚、次回の読書会は4/7(土)を予定しています。
題材は『幕末暗殺!』(中央公論新社)。
この作品は、七人の歴史・時代作家が書いた新作アンソロジーです。

当日は、このうち五人の方においでいただき(予定が合えば全員)、
それぞれの短編ごとに分かれて話し合う予定ですので、
こちらも是非ご参加下さい。

さて今回の読書会で取り上げた『アンフィニッシュト・ビジネス(仮)』は、
私の近現代を舞台にした作品の第二弾になります。

この作品の前に、私は『横浜1963』という作品を書いています。
というわけで今回は、『横浜1963』が発売された2016年に、
文藝春秋の「オール讀物」の「自著を語る」コーナーに掲載された
エッセイを掲載します。

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エッセイ『横浜1963』

これまで歴史小説しか書いてこなかった私だが、
デビュー10周年ということもあり、
思い切ったチャレンジをすることにした。
現代物ミステリーへの挑戦である。

少年時代からドイル、クイーン、クリスティ、
『刑事コロンボ』のノベライズ版などを読んできた私は元来、
ミステリーが大好きだった。

その後もハメット、チャンドラー、松本清張、横溝正史、森村誠一
などのミステリーに親しんできたので、
ミステリーを書くことに抵抗や不安はなかった。

むろん、取り組むとなったら失敗は許されない。

ミステリーの場合、最近は極めてレベルが高い上に、
名うての作家たちが鎬を削っている。

そうした戦場に割って入るには、相応の覚悟と戦略が必要だ。

まず舞台となる時代の設定だが、
これからは徐々に戦後昭和が地続きでなくなり、
歴史の世界へと変化していくと思われるので、
シニア読者がノスタルジーを感じられる時代がいいと思った。

そうした意味で、東京オリンピック前夜の1960年代初頭は、
日本が高度成長期に向かうとば口にあたり、
得体の知れない熱気が感じられる。
つまり舞台としては理想的だった。

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